メガザル(マーウ゜ェラス)

 こんばんは、末期です。

 えっと昨日は どのあたりまで話したっけ?

あっ そうそう ローカルディスクのプログラムフォルダ内に、いつの間にか 僕の知らないフォルダが入っていた事までは話したんだよね?


 そのフォルダ名は「mwgazal」で 一見何の変哲もないフォルダなんだけど ダブルクリックして中を開けてみて びっくり。

 そのフォルダのなかには、拡張子がexeのファイルが 数万個入っていたから‥


 exeファイルといえば みなさんも ご存知のように自動実行ファイルで 良くコンピューターウィルスなんかで使われるけど、これって全部ウィルス?

 試しに 僕のPCに導入しているkasperskyで ウィルス・スキャンを試みたんだけど、予想に反し、何の反応もなくて、ちょっと がっかり


 当然 一体このファイル達には 何が入ってるんだろうっていう好奇心が僕の心を揺さぶり、つい先頭のexeファイルを ダブル・クリックしてしまったんだ。

 すると何やら英語で書かれたインストローラーが立ちあがって、ウィンドウ下部に許可を求めるアイコンが表示されていくので、全部「yes」‥

 最後まで全部クリックし終わると、ダイアログが消えたあと すぐにshokwave形式のフラッシュ動画が始まったんだ


 何やら 画面の中央部分に縮小化されたサムネイル画像が秒速1mm程度の早さで スムーズに拡大されていく。  再生が始まって約10秒後には肉眼で認識出来るほどの大きさまでになり、それを見た瞬間 僕はあまりの驚きに全身が硬直した


 「あっ」と声を漏らしたかは定かではないが、そのときに覚えた恐怖の感情を 今でも はっきりと覚えている。  
 時間にして数秒のはずなのに 僕には まるで時間の流れが完全に停止したかのように、長く感じた


 画像は 僕と両親の集合写真、写真のなかの僕は坊主で まだ幼い

 一・二歳の頃の写真で あろうか?母の隣には父が写っていて いまの僕の顔に近い

 僕は母に両手で しっかりと抱きかかえられて、胸のあたりに位置している。


 父も母も満面の笑みを浮かべていて、父はともかく 母が‥  あの母がこんなにも健やかな笑みを浮かべている姿なんて、物心のついてからの僕には記憶がなかった


 僕の知っている母は、いつも神経質で いつも曇った表情をしていたはずなのに‥


 前の日記にも書いように 僕の母は精神を病んでいてそのせいか いつもヒステリー気味で 子供の頃の僕が
何か 粗相を犯すと容赦なく体罰を与えられた

 いまでも その頃の事が トラウマになっていて、僕の人格形成に悪影響を与えたのは 火を見るよりも明らかなはずなんだけど、出来れば過去の記憶(トラウマ)は思い出させないで欲しかったんだ。     なのに‥


 なのに、その写真を見ると 過去の記憶(トラウマ)が 走馬灯の様に現れては消え 消えては現れた


 僕は いつしか自分が泣いている事に気付いた。

 その涙は、悔し涙なのか なつかしさのあまり 溢れ出てきたのか 理由は定かではないが、一度井戸の湧き水のように じわりと湧き出た その液体は、眼の奥の方から 怒涛のごとく湧き出てきて 自分の意志では どうする事も出来なかった。


 画面のなかの写真が滲む‥

 滲んだ それは まるで 水彩画のように輪郭がぼやけていて すごく綺麗だった


 誰が一体こんな事を‥。

 何故こんな写真が現世に存在しているんだ?


 僕の父は薄情な人間で、僕は幼少のころから 全然構ってもらえず、玩具(おもちゃ)の ひとつさえも買い与えられなかったというのに‥

 だから ありえないのだ。  そんな事、ありえない。


 だからこそ不気味に思う。  この写真を‥ 一体誰が この写真を撮ったんだろう?

 

‥話の腰を折って悪いけど、いまカウンターから「退室時間」を知らせるコールが かかってきたんだ

 だから もうすぐ此処を出なくっちゃ‥


 所持金3万1600円。  ネカフェのナイトサービスや、朝昼夜の飯代含めたら 僕が この世に現存出来る時間は 約1週間弱かな。


 そのあいだに 僕は これを全て書き終えるよ。


 それじゃーね        アディオス